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コラム

医療データを理解するために vol.2『健康保険事業の運営・実施主体の保険者』



 皆さん、こんにちは。JMDCの寺島です。


 梅雨らしい天気が続いていますね。今年の夏は暑くなるのか、また台風が多い年になるのか、気になるところです。線状降水帯の発生による注意喚起が出て、国民生活においても様々な事前のアナウンスがされていました。天気予報の情報伝達も気象変化に伴い多様化してくるのだと改めて感じた次第です。先日、私のチームメンバーも京都で開催される学会に参加を予定していたのですが、そうした予報を受けて早めに移動をしていました。そのおかげで、新幹線の運行状況に左右されず現地に到達できていました。


 さて、私が所属しているJMDCでは6月末に社長交代という大きな変化がありました。2002年の創業から、5代目4人目の社長が新たに就任されました。JMDCもビジネス領域もめまぐるしく変化していく中、新たな体制で人々の健康をデータとICTの力でサポートしていくことになるかと思います。私もこの変化を楽しんで(??)活動していきたいと思っています。


 前回から医療データの理解をしやすくするために、基本的な情報をまとめ始めました。前回の公的医療保険制度について続いて、今回はその制度の中で、健康保険事業の運営・実施主体である保険者について私なりにまとめてみました。



【保険者とは】

 日本の公的医療保険における流れをまずはおさらいします。



 今回は、右上にある『保険者』についてです。保険者は、保険料の徴収、保険給付、病気予防や健康づくりなどの事業を運営、実施しています。前回、公的医療保険の種類をまとめましたが、この公的医療保険を支える運営実施主体は複数存在しています。日本は国民皆保険制度を維持するために、企業に所属している人は、「被用者保険」というカテゴリの保険に加入し、75歳以上は後期高齢者医療制度、そして、そのいずれの対象でない人たちを「国民健康保険」でカバーされています。まずは、代表的な「被用者保険」から整理していきましょう。




・健康保険組合

 健康保険法に基づき、健康保険事業を行う公法人で、1,388の組合があり、加入者は約2,884万人(被保険者/本人:1,635万人、被扶養者/家族:1,249万人)です(いずれも2020年3月末、厚労省資料)。そして、この健康保険組合が運営している保険制度を「組合管掌健康保険」と呼びます。

いわゆる企業で働いている人とその扶養家族が加入しており、JMDCが創業時から提供するデータ「保険者由来のデータ」の元となります。


 健康保険組合は、大きくは以下の種類があります。

  • 1企業により組織された「単一健保組合(被保険者数:700人以上)」

  • 同種同業の事業主等で組織された「総合健保組合(被保険者数:3,000人以上)」

 健康保険証を見ると、企業名の冠した健保組合、業種名を冠した健保組合というところでその違いが分かるかと思います。それぞれの組合で保険料は異なっていますし、新規で設立や解散があったりします。



全国健康保険協会

 「協会けんぽ」という言葉として良く耳にするするかもしれませんが、保険者としての名称は「全国健康保険協会」です。健康保険組合と同じく、健康保険法に基づき設立された保険者ですが、自らが健康保険組合を設立困難な企業(中小や零細企業)の労働者とその家族が加入できるように設立されています。協会としては1つであり、都道府県に支部があります。加入者数は4,044万人(被保険者/本人:2,479万人、被扶養者/家族:1,565万人)です(2020年3月末、厚労省資料)。加入者人数が一番多い保険者となります。この全国健康保険協会で運営している保険制度を「全国健康保険協会管掌健康保険」と呼び、『通称:協会けんぽ』と呼ばれています。


 参考までに、健康保険組合が解散した場合、その健康保険組合に加入していた人は協会けんぽに加入することになるように、被用者保険のセーフティーネットとしての役割ももっています。



・共済組合

 民間企業に関しては前述のとおりですが、いわゆる公務員等を対象に設立されているのが共済組合です。これは、共済各法に基づき85の共済組合、加入者数855万人(被保険者/本人:457万人、被扶養者/家族:398万人)です(2020年3月末、厚労省資料)。国家公務員共済や地方公務員共済、教職員(公立、私立)共済などが存在しています。



 以上が、被用者保険として代表的な保険者です。そして、被用者保険に加入していない人たちをカバーするのが「国民健康保険」となります。国民健康保険も一般的には都道府県、市区町村が運営している国民健康保険は代表的ですが、「国民健康保険組合」というカテゴリも存在しています。



・都道府県および市町村(市町村国保)

 運営主体は被保険者が在籍する各都道府県が主体となり、各市区町村が行っています。前述のとおり、被用者保険や後期高齢者医療制度でカバーしていない人たちが対象となります。保険者としては、「都道府県および市町村」となり、加入者数は2,660万人(2020年3月末、厚労省資料)です。非正規労働者や年金生活者等が70%を占めています。



・国民健康保険組合(職域国保)

 あまり聞きなれない名称かもしれません。通常、法人や従業員を一定以上人数使用する個人事業主は健康保険法の適用となりますが、そうではなく、個人事業主等が同種の事業・業務の従事者を組合員として組織され、国民健康保険に基づいた保険者の一つとなります。全国で159組合(2023年4月)あり、医師や歯科医師、薬剤師、建設などの業種で設立されています。



 そして、最後に高齢者の保険者となります。日本では75歳以上については後期高齢者医療制度で保険制度が定められています。



・都道府県広域連合(後期高齢者医療制度)

 制度変遷からすると、高齢者は被用者保険や国保に加入し、各々に保険料を払いつつ、市町村が運営する老人保健制度から給付を受けるという形でしたが、所得が高く医療費の低い現役世代は被用者保険に多く加入する一方、退職して所得が下がり医療費が高い高齢期になると国保に加入するといった構造的な課題がありました。このため、高齢者医療を社会全体で支える観点に立って、75歳以上について現役世代からの支援金と公費で大半を賄うという「後期高齢者医療制度」が2008年に制定されました。保険料を納める所とそれを使う所を都道府県ごとの広域連合に一元化し、旧老人保健制度において「若人と高齢者の費用負担関係が不明確」といった批判があったことを踏まえ、75歳以上を対象とする制度を設け、世代間の負担の明確化等を図っています。


 75歳の誕生日当日から後期高齢者医療制度の被保険者となり、もともと加入していた保険資格がなくなります。運営主体は、都道府県ごとに全ての市区町村が加入する後期高齢者医療広域連合が保険者となります。

こうした制度設計も時代に合わせて変化してきていますが、高齢者医療制度も高齢化社会に伴う変化という動きも出てくるかもしれません。



 さて、今回は、『保険者』という軸で、医療保険の仕組みの中で、保険料を徴収、給付、保健事業を運営する組織をまとめてみました。これまでは同じ目的のためとはいえ、運営組織が異なり、保険者が変われば、いわゆる保険証も変わり、例えば、レセプトのような医療情報は途切れてしまっていました。昨今のマイナンバーカードの施策、普及により、運営組織が異なってもデータのポータビリティや被保険者や被扶養者が自身の健康情報を見るということが一層加速してきています。こうした制度により、デジタル化が進み便利になる一方で、セキュリティやシステム運用などこれまで以上に新しい概念で考えていかないといけません。誰のための制度であるかを忘れずにこうした取り組みをしていきたいですね。




お問い合わせはこちら:E-mail gterashima@jmdc.co.jp


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